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代表から
挨拶させて
いただきます。

私がまだ26歳で道場で代稽古をしていた時、突然師匠から「今年一杯で道場を閉める。今指導している生徒を高田が道場をつくり、指導しろ!」と言われました。
私の師匠は劇画にも登場し、当時の空手教本のお手本の写真になっている方でしたので、この時すでに病に侵されていた事など想像もしていませんでした。

これまでも時々代稽古はしておりましたが、いざ自分が「道場を持ち弟子を指導する」と思うと一気に不安になりました。
今までは自分の強さ、戦績などだけ考えて稽古をしていれば良かったのですが、弟子となると責任が違います。後輩が弟子になるのです。
今まで自分が教わっていた事を反復しながら弟子達を見るたびに「強い選手を育てている道場は、どんな先生がどんな練習方法で、どのくらい熱心に指導されているのか?」と思うようになりました。

そして今までは自分の事で精一杯だったのですが、素晴らしい選手を育てている道場を手本にして、やれる事からやっていこうと考え、東京や大阪の道場へ見学に行きました。
その道場では、劇画や今までの道場とは違い、理論に基づいた稽古をしていたのです。
当時のその道場の方に、今までの経緯を話し 指導の方法を学びたい旨を伝え、大阪や東京の道場で指導方法を学びました。
東京の道場には寮があり、泊り込みで指導方法を学びました。その寮には時々、大阪から名師範が泊りに来ていたので、寮でも体の使い方や床からどう拳に力を伝えるか?など、熱心に教えていただきました。

また、寮には体の大きな外国人の方々も泊まっており、国によって考え方が全く違うということもその時に学びました。
「〇〇〇の上に〇〇〇〇」をかけて食べていたので…(笑)

人はそれぞれ生まれた国、性別や身長・体重、家庭条件(裕福な家庭とそうでない家庭)など、たまたま生まれた時代によっても全く違った環境にあるわけです。
当道場から力士になった生徒がいます。体格にも恵まれていたからですが、もし少しでも身長が足りなかったら力士にはなれませんでした。視力が悪ければパイロットにはなれません。どんなに就きたい職業でも努力だけではどうにもならないこともあります。

“できる事・できない事。ひとりひとりが違った条件の中で、出来る事を精一杯やる。”

26歳の時の師匠の突然の言葉がきっかけとなり、道場を始めてから、ちょうど26年になります。
未熟者の私がこれまでやってこれましたのも、たくさんの方々のお力添えやご指導・ご鞭撻があったからです。

当道場は、自分の置かれた状況や条件の中で精一杯努力できる機会を最大限に生かし、まずは “人として正しく生きる。” という思いを込め、技術の伝授はもとより、『人を育てる道場』を目指しています。

 

正道会館 士正館
館長 高田 亮